事務所コラム

永村税理士事務所コラム

【第2回】マイナンバー制度について

税理士 姫野浩一


 第1回 マイナンバー制度 では、マイナンバー制度の社会的背景、番号法の立法趣旨や利用範囲の限定にふれ、制度の概要にも若干の言及を試みました。

 その中で、番号法によれば、「事業者は特定個人情報等の適正な取扱いのため、安全管理措置を講じなければならない」と規定してありました。ただ、中小規模事業者に関しては特例措置があり、中小規模事業者以外の一般事業者における原則的方法に比較して若干の緩和措置がとられています。

 しかし、特定個人情報を扱う限り、適切な安全管理措置をとらなければならないことにかわりはありません。

今回は、事業者の視点から、中小規模事業者特例措置を中心に概要についてふれてみたいと思います。なるべく平易になるよう要点のみご説明いたします。


1.番号制度の概要の把握と従業員等への周知

 事業者は、従業員等の源泉徴収事務や社会保険事務、労働保険事務のために、従業員本人から個人番号の提供を受けなければならない。

その際、従業員から個人番号の提供を受ける場合には本人確認が必要であり、事業者は従業員等に対して通知カード等を紛失しないように管理しておくことを伝えることが重要。

併せて、控除対象配偶者や控除対象扶養親族がいる場合には、それらの個人番号も事業者に伝える必要があるので扶養親族等への周知連絡等も重要である。

従業員等が住民票所在地に居住していないケースの場合、住民票所在地に通知カードは送付されるので注意が必要。


2.安全管理措置の中小規模事業者に対する特例

→ 安全管理措置は特定個人情報を取り扱うすべての事業者に課される義務である。なお、中小規模事業者については安全管理措置の特例がある。

 ⑴ 中小規模事業者とは
  … 事業者のうち従業員の数が100人以下の事業者で、次に掲げる事業者を除く。
  ・個人番号利用事務実施者(行政機関)
  ・委託に基づき、個人番号関係事務または個人番号利用事務を業務として行う事業者
   (exe,税理士、司法書士、社労士他)
  ・金融分野の事業者(exe.銀行等の金融機関)
  ・個人情報取扱事業者

安全管理措置の中小規模事業者に対する特例
  … 事業者は特定個人情報等の適正な取扱いのため、以下の安全管理措置を講じなければならない
  ①組織的安全管理措置(→事務作業の見直し)
  (ア)事務取扱担当者が複数いる場合
    …責任者と事務取扱担当者の区別が望ましい(けん制効果が期待できる方法)
  (イ)取扱規定等に基づく運用状況の記録・確認
    …特定個人情報等の取扱状況がわかる記録の保存(exe.業務日誌等への記録等)
  (ウ)情報漏えい等事案に対応する体制の整備
    …情報漏えい事案の発生に備え従業者から責任者への連絡体制等をあらかじめ確認しておく
  (エ)取扱状況の把握および安全管理措置の見直し
    …責任者が特定個人情報等の取扱状況(管理簿や執務記録)について定期的に点検を行う
  (オ)特定個人情報等を取り扱う区域の管理
    …特定個人情報の漏えいを防ぐため、特定個人情報ファイルを取扱う管理区域及び特定個人情報等を取り扱う事務を実施する「取扱区域」を明確に区別する。

  ②物理的安全管理措置(→事務所レイアウトの見直し)
  (ア)特定個人情報等を取り扱う区域の管理…特定個人情報の漏えいを防ぐため、特定個人情報ファイルを取扱う管理区域及び特定個人情報等を取り扱う事務を実施する「取扱区域」を明確に区別する。
  (イ)機器及び電子媒体等の盗難等の防止…管理区域及び取扱区域における特定個人情報等を扱う機器、電子媒体および書類の盗難・紛失を防止するための物理的な安全措置を講ずる。
  (ウ)電子媒体を持ち出す場合の漏えい等の防止…特定個人情報等が記録された電子媒体、書類等を持ち出す場合、パスワード設定等の安全措置を講ずる。
   (エ)個人番号の削除、機器及び電子媒体等の廃棄…保存期間が過ぎた特定個人情報等は適切に廃棄しなければならない。削除・廃棄したことを責任者が確認する。

  ③技術的安全管理措置(→情報システムの管理方法の検討)
  (ア)アクセス制御およびアクセス者の識別と認証…特定個人情報等を取り扱う機器を特定し、その機械を取り扱う事務取扱担当者を限定することが望ましい。(ユーザーアカウント制御機能を使用が望ましい)
  (イ)外部からの不正アクセス等の防止…情報システムを不正アクセス等から保護する仕組みを導入、適切に運用する。
  (ウ)情報漏えい等の防止…特定個人情報等をインターネット等で外部に送信する場合、通信経路における情報漏えい等を防ぐための措置を講ずる。

  ④人的安全管理措置(→事務担当者の教育・監督)
  事務処理担当者の監督・教育…特定個人情報等が取扱規定に基づき適正に取り扱われるよう、事務処理担当者に対して必要かつ適切な監督および教育を行う。

特定個人情報の適正な取扱い(中小規模事業者向け)

  個人番号の取得
  事業者は、社会保障および税に関する手続書類(以下「手続書類」という)の作成事務を処理するために必要がある場合に限って、従業員等に個人番号の提供を求めることができる。
  個人番号を取得する際には、本人確認が義務付けられている。
  本人確認の方法は、個人カードもしくは通知カードおよび身分証明証(運転免許証等)の提示等の方法がある。
  従業員等に扶養親族等がいる場合にかかる本人確認は従業員等本人が行う。
  従業員等へ個人番号の提供を求める時期は、社会保障および税に関する手続き書類の作成事務が発生した時点が原則。ただし、従業員等との雇用契約が生じた時点でその事務の発生が予想できる場合は、その時点でも可能。

  ②個人番号の利用・提供
  事業者は、社会保障および税に関する手続書類(法令に基づき行う源泉徴収票作成事務、健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届作成事務等に限定した手続書類)に個人番号を記載して、行政機関等および健康保険組合等に提出する(個人番号関係事務)。

  事業者は、個人番号関係事務を処理するために必要な範囲に限って、特定個人情報ファイルを作成できる。

  番号法で限定的に定められている事務の範囲(社会保障・税)以外の場合は、本人の同意があったとしても本来の利用目的を超えて個人番号・特定個人情報を利用・提供することはできない点に注意が必要。

 ③個人番号の保管
  事業者は、従業員等の特定個人情報を利用する事務を行う必要がある場合に限り、それらの特定個人情報を保管し続けることができる。

  特定個人情報等を取り扱う機器、電子媒体または書類等は適正に管理・保管する必要がある。

  事務所内の施錠できるキャビネット、機器のセキュリティワイヤーによる固定等、電子媒体を持ち出す場合の機器のパスワード設定や置き忘れや盗難防止、USB等の管理などが考えられる。

  ④個人番号の廃棄
   事業者は、特定個人情報を利用する事務を行う必要がなくなった場合で法令で定められている保存機関を経過した場合には、個人番号を速やかに廃棄または削除する必要がある。
  削除または廃棄を委託する場合には、委託先が確実に削除または廃棄したことについて、証明書等により確認する必要がある。

委託の留意点
  →「必要かつ適切な監督」…委託者(事業者)は、委託先において、番号法に基づき委託者自らが果たすべき安全管理措置と同様の措置が講じられるよう、「必要かつ適切な監督(※)」を行わなければならない。

  委託先が再委託する場合は、最初の委託者の許諾を受けた場合に限り、再委託することが認められている。

  ※「必要かつ適切な監督」とは以下の内容。

  ①委託先の適切な選定
  ②委託先に安全管理措置を尊守させるための必要な契約の締結
  ③委託先における特定個人情報の取扱状況の把握

  事業者は、委託先の設備、技術水準、従業者に対する監督・教育の状況、その他委託先の経営環境等をあらかじめ確認しなければならない。

  委託先との契約に秘密保持義務、情報の取扱に関する禁止事項、情報漏えいの防止対策や漏えいした際の委託先の責任、委託終了後の個人情報の返却または廃棄、従業員の監督・教育、契約内容の尊守状況に関して報告を求める規定等を盛り込む必要がある。

  また、個人情報を取り扱う担当者の明確化や委託者が委託先に対する実地調査ができる規定等を盛り込むことが望ましいと考えられる。すでに、委託契約を締結済みの場合は、契約内容の見直し、または覚書等を締結することが望ましい。

以上

【第1回】 マイナンバー制度について

税理士 姫野浩一


 今、巷でうわさのマイナンバー制度。今年の10月から皆さんのところにマイナンバーが送付され、平成28年1月からマイナンバー制度の運用が本格的に開始されるとのこと。あと半年しかありません。しかし、いまだ未確定要素が多く、現段階ではなんとも把握しづらい制度です。未確定要素が多いこの制度ですが、公表されている部分について内容を要約して説明することとします。


1.マイナンバー制度の社会的背景

 民主党の時代に問題が表面化した「消えた年金問題」、「生活保護不正受給問題」、「住基ネットに関する議論」により国民の関心に変化が生じている。
 ここに、住基ネットに関する議論とは、

① 住基ネットの情報について、情報漏洩等の安全性は確保されているか
② 住基ネットは、憲法で保障されている個人のプライバシー情報を侵害していないか
③ 自己のプライバシー情報の取扱い方を自己決定する利益(自己情報コントロール権)は確保されているか

 これらの議論に対する裁判の判決によれば、
上記①については、行政による住基ネットのデータが集積される中央サーバーへの侵入実験を幾度か試みたが失敗、その結果からは外部からのアクセスできる危険性はないこと、不当アクセス等の情報漏洩等は懲戒処分や刑罰をもって禁止されていること等からは不当に第三者に開示される危険性は生じるということもできない。
 ②③の権利が確保されているかは、住基ネットの本人確認情報は氏名・生年月日・性別・住所に住民票コード等を加えたもの。このうち4情報は人が社会生活を営む上で当然開示が予定される個人識別情報であり秘匿性の高い情報とは言えないので権利を侵害するものではない。(平成20年3月6日、いわゆる住基ネット訴訟の判決)


2.番号法(マイナンバー法)とは

 行政機関等が情報を照合して効率的な情報の管理および利用における迅速な情報の授受を行うことができるようにするとともに行政運営の効率化および行政分野における公正な給付と負担の確保を図る(行政の利便性)。それにより、国民が手続の簡素化等の利便性向上を得られるようにするための必要な事項を定めるように、①行政機関が保有する個人情報保護に関する法律、②独立行政法人等の保有する個人情報保護に関する法律、③個人情報の保護に関する法律の特例、を定めることを目的とする(個人の利便性)。


3.番号法の利用範囲 … 社会保障分野、税分野、災害対策分野の3分野に限定。


4.マイナンバー制度

A)付番 … 住民票全員に唯一無二の番号を付番し、最新の基本4情報(氏名、性別、住所、生年月日)と関連付ける。

  • 個人 …
     27年10月以降、個人に通知カードが送付される。有効期間は10年間(20歳未満は5年)。電子証明書も付与。
     個人番号の所管が総務省。

  • 法人 … 
     唯一無二の法人番号を付与。本店のみで支店等には付与されない。法人番号の所管が国税庁。

B)情報連携 … 複数の各機関で同一情報の紐付け、相互に活用する仕組み。

C)本人確認 … 
 ①個人が自分が自分であることを証明する仕組み(身元確認)、
 ②個人が自分の番号の真正性を証明する仕組み(番号確認)

  • 番号法の利用範囲である3分野で利用するときは上記①②を確認するためには、個人番号カードの確認で事足りる。
  • 個人番号カードが確認できなければ、代替として以下の(ア)、(イ)
    (ア)「通知カード+身元確認書類」…通知カードは個人カードおよび基本4情報が記載されているが顔写真がない。そのため身元を確認できるなんらかの書類(運転免許証等)を提示してもらう必要がある。
    (イ)上記(ア)がない場合は、「番号確認書類+身元確認書類」… 「番号確認書類」とは、個人番号が記載された住民票の写し等をいう。
  • 本人の代理人から個人番号の提供を受ける場合、「代理権確認書類+代理人身元確認書類+本人番号確認書類」
  • 申告書、法定調書等の税務書類への個人番号・法人番号記載
    正式には決まってないが予定だと次のものから記載が必要となる。
    ①所得税・贈与税 … 平成28年の申告書(準確定は28年に提出するもの)
    ②法人税 … 平成28年1月1日以降に開始する事業年度にかかる申告書
    ③消費税 … 平成28年1月1日以降に開始する課税期間にかかる申告書
    ④相続税 … 平成28年1月1日以降の相続または遺贈にかかる申告書
    ⑤酒税・間接諸税 … 平成28年1月分の申告書
    ⑥法定調書 … 平成28年1月以降の金銭等の支払等に係るもの
    ⑦申請・届出書等 … 平成28年1月以降に提出するもの

以上

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